団塊末子作詩集

1

  裏街ブルース

化粧なおしの鏡の中に 
あたしの心がゆれまどう
あなたを偽ることを知り 
これもこれもこれも愛
傷つくだけの 愛なのよ

あなたの全て知りつつ燃えた 
愛の果てまで堕ちて沈むわ
いけない男にしたくない 
愛の愛のみにくさを
知ってしまった あたしには

あさい眠りのあなたの胸に 
すがりつきたい突き放したい
人生捨てたあたしには 
おとこおとこそれだけね
裏街ネオン ためいきか

     1967年

2

   ふたりの女

あなたに抱かれたあと
またいだかれる
そしらぬ顔する ふたりの女です
それでもこころひとつだけ
愛にはかわりないのよ 夢をみただけ

夢をみたいだけよ
許してほしい
忍んでわびたい 気持ちがなお募り
あなたの胸にとけてゆく
ここだけ妻なのあたし 帰るところは

過ぎゆく年をかさね
男と女
いろづくもみじに 歩いた道おもい
あなたとともにこれからも
夢みた思い出秘めて 生きてゆけるわ

     2002年

3

   抱(いだ)かれて

秋・・・紅葉が色づきやがて
空(くう)を舞い大地にかえる
ランドセルを背負うこともなく
桜咲く春を知らずひな祭りの次の朝
逝ってしまった私の小さな娘
「母親として凛としなさいね・・・しっかりと」
受話器から届いた母の声・・・あの母の声

色・・・白で林檎が好きだった
病のなか舅(しゅうと)を気遣い
待ち望んだはじめての孫
精一杯に生き抜いた嫁として母として
優しさに溢れた女(ひと)だった
「もうあなたの歳を三つも超えてしまった・・・私」
限りある生命の愛おしさ・・・その愛おしさ

窓・・・開ければ黄色の稲穂
夕陽を受け 眩しく光る
抱きしめたい生命の流れ
そして今競い合って入れてくれる日本茶
娘たち三人三様の味がする
「ねえお母さんお茶熱すぎたかな・・・美味しい?」
日々の暮らし束の間のひと時・・・このひと時
「ありがとう・・・」         
          
     2007年

4

   倖せひとり暮らし

ねぇ・・・ 少しだけ はなれましょう 
でもおなじ空の下
蔵造りの街並みとおりぬけ 
湖畔の夕映え水面に輝いて
鳥たちも 明日にむかい羽ばたくのね
私 倖せひとり暮らしをしてみたい

ねぇ・・・ 少しだけ わがままさせて 
この生命(こころ)抱きしめて
もう一度夢みた頃にかえり
溢れる想いに優しく包まれて
風や空 木々の声をききながら
私 倖せひとり暮らしをしてみたい
私 倖せひとり暮らしをしてみたい
      
     2008年

5

   いやよいやよの演歌うた

  散りぬるを我が恥ずかし心人恋いの
  溢るる涙指先にかくした演歌うた

浅い夢かしら あなたの声で目覚めた
夜明け前 我が世たれそ 彩づくおもい
かさなって 独りくちずさむ
あなた・おしえた演歌うた
いやよいやよの演歌うた 
酔ってみたい 酔ったふり 
さぁさ ほどよく咲いて歌いましょう

淡い夢なのね 乙女心に芽生えた
夜明け前 色は匂えど 常ならん
妻から母へ 独りくちずさむ 
あなた・おしえた演歌うた
いやよいやよの演歌うた 
酔ってみたい 酔ったふり 
さぁさ ほどよく咲いて乱れましょう

明日を夢みたい逢いたい人に逢えます
夜明け前 有為の奥山 今日こえて
微笑みあふれ 独りくちずさむ
あなた・おしえた演歌うた
いやよ いやよの演歌うた 
酔ってみたい 酔ったふり 
さぁさ ほどよく咲いて乱れましょう
    
   (いろはにおえど数え唄)
     1998年

6

   咲く花匂い花倖の花

こんなに狭いベランダーのプランター 
夢みるように 誘うように咲いたパステル
・・・ピンク 名前も知らなかったあいつ
いっぱいお知えてあげた・・・ね 
*「りんどう 浜木綿 ほととぎす」
ああ まぶしく光る心もよう想い出匂い花 
溢れるいとおしさ そっと抱きしめる

 (台詞)咲く花 匂い花 倖の花
     もっと知りたい 花いろいろ

泣くほど惚れたあいつじゃなくて今 
好きな人に 寄り添って暮らす自分が
・・・不思議 あんなにそばにいたくせに
振り向いてくれなかった・・・ね
*「あやめ すみれ ゆり」
ああ 芽生える生命名前のないふたりの倖の花 
溢れるいとおしさ そっと抱きしめる
・・・そっと抱きしめる

* あなたの好きな花の名前で歌って下さい
     2009年

7

   泣いている

地下鉄(メトロ) 降りた帰り道
細いヒールが折れて
抱き寄せるあなたがなぜか幼い
もっと恋を戯れていたいのに・・・
またひとりぼっちになっちゃった
ああ 赤い靴履いて 踊りつづけたい
いまも夢みる わたし

寄せる波と潮騒は
彩づくおんなのよう
腕まくらあなたはなぜに優しい
もっと恋を戯れていたいのに・・・
またひとりぼっちになっちゃった
ああ パンプス鳴らして 明日さようなら
いつも振るのは わたし

ああ 赤い靴 履くから連れて行ってよ 
異人さんの住んでる異国の街 
・・・異国の街

     2008年

8

   今かもしれない

あら!トンボがとまってる 
あの子たちがはいはいしていた縁側
秋風に誘われてふらりひとやすみ 
電話きましたよ
故郷のみなさんかわりないって 
あなたも長い間お疲れ様でした
これから二人の暮らしが始まるのね 
そぅ!今かもしれない
家に鍵かけて出かけましょう

そう!今かもしれない 
あの子たちもいい人に出逢い子供が
生まれると楽しみよ私達の孫
ラインきましたよ 
彼を紹介したいからって 
あなたと過ぎた日々は 走馬灯のように
これから二人の暮らしがはじまるのね 
さぁ!今かもしれない
家に鍵かけて出かけましょう

これから 二人の暮らしが始まるのね 
さぁ!今かもしれない
家に鍵かけて出かけましょう
             
     2008年 

9

   飾れない女

10

   そして・・・夏は来ぬ

春は曙 夢をみた 
椅子に掛けたあなたのブルゾン 
心をこめて たたんででみたいのに 
でも・・・とどかないわ
妻じゃないの私 
人肌の涙で 目が醒めたのよ

秋は黄昏 ひとりだけ 
罪ね二人づれで来るなんて 
あなたの仕草 崩れてしまいそう 
だめ・・・私はママ
暖簾は母ごころ 
も少し夢みたい このカウンター

冬は夕映え人はゆき 
家族みたい重ねた年月(きせつ) 
出逢いと別れ 人生のいろいろ 
そう・・・生きた証
私は詩(うた)にして 
星空に包まれ 口遊(くちずさ)むのよ 
             
     2008年

11

   ねぇ おしえてください

ねぇ おしえてください ふっと
うたいたくなるのはなぜですか・・・

一人きりで小さな声でささやくように
自分のなかのもう一人の私に
よびかけながら 悲しみでもない
淋しさでもない 空っぽの心を
満たせるでしょうか

ねぇ うたってください そっと
さりげなくきかせてくれますか・・・

二人になって重なる声でよりそいながら
自分じゃないもう一人のあなたと
同じうたを なにげなくていい
うまくなくていい ふるえる心を
抱きしめましょうか

自分しらべ自分しるべ きこえてきます
うぶ声あげて歩いてきた私の
思い出たどり 希望つなぐうた
明日に生きるうた ときめく心を
見つめましょうか    
            
     2007年

12

   沿線の女(ひと)

心 コロコロ ころがっ・・・た
こころひとつの 希望の夜明け
「足手まといだから・・・♪」
そっと 寄り添う年上の女
眩しすぎた 別れの予感
山の手沿線 ワンルーム

夢は ユメユメ 消え去っ・・・た
ゆめのかけらも ない昼下がり
「強く生きなきゃだめなの・・・♪」
そっと つぶやく年上の女
哀しすぎた 別れの予感
小田急沿線 マイホーム

寒い サムザム 醒めきっ・・・た
さむさぬくもり 春待つ二人
「泣きぼくろ泣きぼくろ・・・♪」
そっと 抱きしめ年上の女
優しすぎた 別れの予感
京王沿線 ラブホテル
         
     2014年

13

   はなびら・ふたつ

「あぁ雨だよ・・・哀しみ涙のように
降ってきた 小さな倖せだけでいいのよ」
あなたの背中に顔伏せて いやいやの
首をふる いけないのは私だもの・・・
レースのカーテン なみだ雨
思い出はなびら ひとつ散りました

「あぁ雨だよ・・・悦び涙のように
降ってきた 二人で倖せさがししようね」
あなたの横顔いとしくて いやいやの
首をふる 愛しすぎた私だもの・・・
レースのカーテン なみだ雨 
七色はなびら ふたつ咲きました

そして今・・・手と手とりあって 傘もない
あなたと私 濡れてます・・・濡れてます
               
     2014年

14

   半分分け

男はバカよ 
バカを半分分けて欲しいの
わたし・・・あなたの好きな 
いい女のまま 生きていたい

深すぎる夢は
明日がみえなくなるわ
負けず嫌いは 少年時代にさよならでしょ
男のジェラシーは 男を哀しくさせる

女は今よ 
今を半分分けてあげたい
あなた・・・わたしの好きな 
いい男のまま 生きてほしい

深すぎる夢は
今日が醒めてしまうわ
負けず嫌いは 少女時代にさよならなの
女のジェラシーは 女を優しくさせる

「半分分けでいいのにね
 半分分けでいいのに・・・・・・」
        
     2013年

15

   アフターセブン

淡いピンク 君のルージュ
ブランディーの薫り 彷徨う女心
「ジャズ それとも ボサノバ・・・?」
瞬(まばた)きしながら 僕に問いかけて
流れるのは真っ赤なバラのフラメンコ
揺れてる 揺れてる・・・長い髪
ふるえる ふるえる・・・小さな肩
黄昏ナイト アフターセブン

淡いマニキュァ 君の指先
バーボンの匂い 漂う男心
「ラテン それとも ブルース・・・?」
瞬(まばた)きしながら 僕に問いかけて
どうでもいいグレーな吐息ウィークエンド
揺れてる 揺れてる・・・長い髪
ふるえる ふるえる・・・小さな肩 
黄昏ナイト アフターセブン
              
     2015年

16

   あしたは天気 

下駄けとばして 夕焼けの空に
お願いしたよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
そんなに遠くないむかし
姉さんと手をつなぎ おうちに帰った
想い出いっぱい・・・いっぱい

てるてるぼうず 軒下につるし
お願したよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
そんなに遠くないむかし
兄さんと声かさね 背伸びしてみた
想い出いっぱい・・・いっぱい

いろとりどりの 折鶴にこめて
お願したよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
そんなに遠くないむかし
父さんも母さんも みんなで笑った
想い出いっぱい・・・いっぱい
     
     2015年

16②

   あしたは天気

下駄けとばして 夕焼けの空に
お願いしたよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
まぁるい茶ぶ台 夕げのおかずはなぁに
そんなに遠くないむかし
姉さんと手をつなぎ おうちに帰った 
思い出いっぱい・・・いっぱい

てるてるぼうず 軒下につるし
お願したよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
リュックにお弁当 遠足おやつはまぁだ
そんなに遠くないむかし
兄さんと声かさね 背伸びしてみた 
思い出いっぱい・・・いっぱい

いろとりどりの 折鶴にこめて
お願いしたよねっ
「あ~した天気にしておくれ」
かわいい赤ちゃん 小ちゃなお布団いいな
そんなに遠くないむかし
父さんも母さんも みんなで笑った  
思い出いっぱい・・・いっぱい
     
     2015年

17

   あのねのねこのねのね

あの 世のねこの世のね
七色虹の架け橋は
母さん歌うよ・・・子守唄
「ねんねんね~ん ねんねんねん」

あの 実のねこの実のね 
空にとどくよ豆の木は
父さん種まく・・・実り唄
「ぽんぽんぽ~ん ぽんぽんぽん」

あの 日のねこの日のね 
七つの海に風の色
兄さん教えて・・・流れ唄
「ぐいぐいぐ~い ぐいぐいぐい」

あの 葉のねこの葉のね 
両手に花の匂いたつ
姉さん倖せ・・・恋の唄  
「さいさいさ~い さいさいさい」

あの ねのねこのねのね 
宝ものです紅葉の手
みどりご微笑む・・・夢み唄
「ねんねんね~ん ねんねんねん」

あの ねのねこのねのね 
ずっとつづくのね・・・つづくのね・・・
      
     2015年

18①

   今日(いま)は・・・

過ぎてしまえば 何もない
今日(いま)は 君の温もりだけあればいい
幼児にかえったね 淡葉の手
俺が分かるのか?ただみつめる瞳
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」
ふたりで見上げる 諏訪湖・花火 

思いだしたい ひとつづつ
今日(いま)は 君と語りつくし過ごしたい
素顔のようだったね 薄化粧
俺の勘違い?頬に紅さしてる
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」
ふたりで咲かそう 富士見・桜
 
心深くに 香り立つ
今日(いま)は 君に淹れているよ朝のお茶
転がせてくれてたね 手のひらに
俺に言ってくれ?何でもきいてあげる
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」
ふたりで行きたい オッコー・祭り
     
     2018年

18②

   いいずら・ほうずら

過ぎてしまえば 何もない
今は お前の温もりだけ あればいい
幼児にかえったね 淡葉の手
義父に重ねてる ただみつめる瞳
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」
いいずら ほうずら 入笠・八ヶ岳

思いだしたい ひとつづつ
今は お前と語りつくし 過ごしたい
素顔のようだったね 薄化粧
義母に似てきたの 頬に紅さしてる
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」
いいずら ほうずら 君影草(すずらん)
・あつもり草

心ふかくに 香り立つ
今は お前に淹れているよ 朝のお茶
転がせてくれてたね 手のひらに
友が待っている 信州夏まつり
「帰ってきたよ・・・お前を連れて」 
いいずら ほうずら オッコー
・富士見太鼓
           
     2018年

19

   女心のマニキュア

私の子猫よ ここにおいで 
背中(せな)を伸ばして ミャーミャーと
「さぁ~爪をお出し!塗ってあげるわ
もう来ない・・・さよならあいつ 
思い出は 薄紫がお似合いね」
お部屋の香り 女心のマニキュア

私の子猫よ ここにきたの
喉を鳴らして ゴローゴロと
「さぁ~爪をお出し!塗ってあげるわ
もう来ない・・・グッドバイあいつ
移り気は 薄いピンクがお似合いね」
お部屋の香り 女心のマニキュア
 
私の子猫よ ここにいてね
寝息をたてて スゥースゥーと
「さぁ~爪をお出し!塗ってあげるわ
もう来ない・・・バイバイあいつ
お別れは 薄水色がお似合いね」
お部屋の香り 女心のマニキュア
     
     2019年

20

   やゆよ・・・やゆよ

ナニ・ナニ・・・ なにぬねの
そんなに辛いの?
「恋におちたらゲームセット」
出逢いはほんの戯れよ
人生ストライクばかりじゃ
つまんないものね あなた

ラリ・ラリ・・・ らりるれろ
そんなに崩れて?
「恋におちたらゲームセット」
出直しできる大人でしょ
人生アウトコースありよ
いいおとこだもの あなた

マミ・マミ・・・ まみむめも
そんなに眩しい?
「恋におちたらゲームセット」
出来すぎてたのこれまでは
人生エンドレス・スートリー
ときにはあまえて あなた

やゆよ・・・やゆよ 私 あなたの
マミーなの ゆりかごゆられて
夢のなか・・・夢のなか・・・
   
     2019年

21

   ここはかぞえてななつ街

かぞえてひとつ ひとつ街
輝いて出で生まれ大地に樹(た)つ

かぞえてふたつ ふたつ街  
健やかに育まれ風に遊ぶ

かぞえてみっつ みっつ街
虹を見て恋心宙(そら)を駆ける

ここはかぞえて ななつ街
星降る街の小さなカウンター
誰もが独りグラスに想い偲ばせる 

かぞえてよっつ よっつ街
ひとの世のなみかぜに息ひそめる

かぞえていつつ いつつ街
抱(いだ)かれてあいなさけ海に辿る

かぞえてむっつ むっつ街
両の手にながれ星満ち溢ふれる

ここはかぞえて ななつ街
星降る街の小さなカウンター
誰もが独りグラスに想い偲ばせる

     2019年

22

   なくてななくせ

なくて七癖なつかしい 腕組むのが
くせだった どこか似ている横顔の
「・・・あぁ みゆき」  
君の眼差し 想いだす

なくて七癖なつかしい 眉毛さわる
くせだった どこか似ている たばね髪
「 ・・・あぁ たまき」 
君の悲しみ 深かった

なくて七癖なつかしい ため息吐く
くせだった どこか似ている独り言
「・・・あぁ さゆり」 
君の唇 欲しかった

なくて七癖なつかしい 爪咬むのが
くせだった どこか似ている口べたの
「・・・あぁ しおり」 
君の嘘には 弱かった

なくて七癖なつかしい 首傾げる
くせだった どこか似ている色白の
「・・・あぁ かすみ」 
君の心は 謎だった

なくて七癖なつかしい 唇咬む
くせだった どこか似ている紅のいろ
「・・・あぁ まゆみ」
君の戸惑い 恐かった

なくて七癖なつかしい 瞬きする
くせだった どこか似ている 奥二重
「・・・あぁ ひとみ」 
君の我儘 許してた
     
     2020年

23

   黄昏の窓辺

「歌わないのに聞こえるの」
水平線 見上げて瞬(まばた)く君
頬よせ歩いた砂浜
キラリと光るさざ波
どうして僕は 立ち止まったのか
遠い過去の あの夏の日
黄昏の窓辺に 想い巡らせる
今ならわかるよ・・・ごめんね

「聞こえないのに見えるの」
交差点 目を伏せ呟(つぶや)く君
後れ毛星ふる街角
眩しく走るヘッドライト
どうして僕は 立ち止まったのか
遠い過去の あの秋の日
黄昏の窓辺に 想い巡らせる
今ならわかるよ・・・ごめんね

「見えてないのに感じるの」
雪化粧 背中に囁(ささや)く君
うらはらああ女心
振り向き抱いてやれない
どうして僕は 立ち止まったのか
遠い過去の あの冬の日
黄昏の窓辺に 想い巡らせる
今ならわかるよ・・・ごめんね
・・・ごめんね
     
     2020年

24

   あんたのメルヘン
    ~ ジュエットで ~

あんたはあっち 私はこっち 
ちょうど真ん中誰かいる? 
タンタンたぬきと知恵くらべ 
五合どっくり転んでる 
窓の外シンシンシン♪ 
と 夜が更けて 
あんたと私の朝がくる

あんたはおなか 私は背中
ちょうど真ん中何かある? 
ヘタヘタへそくりばれちゃって 
今夜のつまみ好物だ 
特上のクックックッ♪ 
と いい香り 
あんたと私の夜がくる

あんたはおそら 私はのはら 
ちょうど真ん中どうなるの? 
チョロチョロ蝶々が遊んでる 
菜の花よりも薔薇に飛ぶ  
掌にウルウルウル♪ 
と 雨も降り 
あんたと私の明日がくる
   
     2020年

25

   情情なさけ

「もっと欲しい・・・」と
グラス傾けりゃ溶けない氷
はじけてすすり泣く 
貴方がそそぐ情情なさけ
ふかい情けのその先
男の背中がみえてくる
そんなずるさも愛おしい
見上げる窓に流れ星

「愛の名残り・・・」と 
グラス傾けりゃ気怠い吐息 
首すじすすり泣く
私がそそぐ情情なさけ 
ふかい情けのその先 
女のこころが霧になる
そんなずるさも忍びない 
見上げる窓に明けの星

「ほんの少し・・・」と
グラス傾けりゃ仄かな香り 
睫毛にすすリ泣く
寄り添いそそぐ情情なさけ
ふかい情けのその先 
ふたりの流れが川になる 
そんな明日が待っている 
見上げる窓に永遠の星 
    
     2021年

26

   も一度の夢に

北風に背を向け 揺れる芒
優しすぎる貴方の心を知りながら
も一度の夢に・・・酔えない私
春に咲き夏 花開いたあの年月
・・・過ぎ去った面影蘇える
・・・いまも忘れない

春風に誘われ 薫る陽ざし
大人すぎる貴方の心に抱かれても
も一度の夢に・・・詫びてる私
春に咲き夏 花開いたあの年月
・・・過ぎ去ったぬくもり蘇える
・・・いまも忘れない

夕映えに舞い飛べ 空の彼方 
待たせすぎた貴方の心に甘えたい
も一度の夢に・・・羽ばたく私
春に咲き夏 花開いたあの年月
・・・過ぎ去ったおもいで蘇える
・・・いまも忘れない・・・忘れない
   
     2021年

27

   彩の女(はな)

街並みの蔵造り きもの姿に
時の鐘 小江戸のかおり
大正浪漫 山吹のように
咲いた花(ひと)だった
あぁ・・・ あの日の川越
・・・彩の女(はな)

潺のさくら径 紅葉に牡丹
水の風 むさし嵐山
千年の苑 ラベンダーゆれて
咲いた花(ひと)だった
あぁ・・・あの日の松山
・・・彩の女(はな)

旅愁の小京都 駅の終着
和紙の里 七夕かざり
水芭蕉花火 カタクリみたいに
咲いた花(ひと)だった
あぁ・・・ あの日の小川
・・・彩の女(はな)

     2023年

28

   俗曲れいわ

『枕一つの女になりました』
おじゃみじゃおじゃみ
おじゃみじゃよ・・・
お手玉ついてよせ玉あそび
「あんたがたどこさ ひとりじゃさみし」
ちりりんちりりん 小豆がうたう
ちょうちんゆらゆら 風に舞う

『枕一つの女になりました』
おじゃみじゃ おじゃみ
おじゃみじゃよ・・・
お手玉ついてよせ玉あそび
「あんたがたどこさ ひとりじゃさみし」
お手のせお手のせ 小豆が踊る
あんどんほのかな 夢に酔う

おふたつおふたつ 小豆が遊ぶ
とうろうおぼろな 男(ひと)に咲く
ああぁ・・・まぼろし手枕 ぁ吐息花 
あぁ・・・ああぁ・・・
     
     2023年

29

  ほらほら・・・ねっ

あなた 立ち止まったのねっ
じゃぁ 振り向いてごらんなさい
小さな天使がしっかりと
足・・・地につけて笑ってる
「はじめまして」
ほらほら ご挨拶してるのよ

あなた 飛び出したいのねっ
じゃぁ 顔あげてごらんなさい
幼い自分が泣きそうに
両・・・の手伸ばし探してる
「だいじょうぶ」
ほらほら 空の声きこえるよ

あなた 迷い道なのねっ
じゃぁ 目を閉じてごらんなさい
触れ合うぬくもり感じたら
ひと・・・りじゃない芽生えてる
「しあわせにね」
ほらほら 待ってる人がいるのよ
「しあわせにね」「しあわせにね」

2013年

30

  は・ひ・ふ

・・・春の童謡に遊ぶ

はらはら さくらのさく
    はるまつこころ はなはえだに
    生かされて・・・
          (春よ来い)

    
ひらひら さくらのまう
    ひそやかこころ えだはみきに
    息づいて・・・
          (ちょうちょ)
    
    
    ふわふわ さくらのとぶ
    ふうげつこころ みきはつちに
    抱かれて・・・
          (さくらさくら) 
 

2023年