誰よりも君を愛す ・・・ 巻頭 ・・・

団塊末子のつぶやき

誰よりも君を愛す

一番好きな歌・・・幻想の空間に向かって、私の身体から魂が浮遊してしまった。小学4~5年生の頃に観た映画の主題歌・・・初めて知った歌謡曲だろう。ストーリーなど何も覚えていない。本郷巧次郎、叶順子、主演二人の名前を、はっきりと記憶している。観てはいけない、大人の映画を観たと感じた。

「誰にも言われず互いに誓った、かりそめの恋なら…誰よりも誰よりも君を愛す・・・」秘められた、押し殺した女の声。泣くようで、甘えるような、なによりも囁きの声。官能美と言う音色を、スクリーンから流れる歌で視入ってしまった。子供心に感じてしまった。不思議な体験だった。

それからずっと後に、テレビで歌手の松尾和子を知った。

その後、十九歳位の頃に観た、フランス映画『男と女』の主演女優アヌーク・エーメの、画面いっぱいに映し出される苦悩の表情が、松尾和子の歌声とぴったりと重なりあった(スクリーンから流れる、テーマ音楽 『男と女』が、フレンチボサだと、初めて聞く言葉だった)

2本立ての、もう1本は『北上川夜曲』だった。朱く灯った燃え上がる炎が、真っ暗い闇の中にくっきりと浮かびあがり、 澄みきった清純な声にソフトな男の声が重なる。その間を、繊細にくぐり抜ける切ないのか甘いのか、震えながら沁み込んでくる音色。それが、スチールギターと認識したのは、いつの頃だろうか。

私の好きな歌(歌謡曲)の原点(ルーツ)が、ここにあった。

夕映えママのつぶやき

俺はお前に弱いんだ

いつ時の頃か、中学生だったと思う。自分の部屋で、机に向かい、ラジオをつけっぱなしにして、いつものようにボーとしていた。

『俺はお前に弱いんだ』石原裕次郎の歌が流れた瞬間、イントロで本能的に目覚める私のアンテナが、ピーンと伸びきった。な、なんともキザなセリフ・・・でも音楽の心地よい清涼感、じわっと涙がでてきた。大人の優雅さ、贅沢さ、仄かな夜の闇に包まれて、知らない世界に吸い込まれてしまった。

歌詩だけなら、「ウワァ、キザ」としか感じなかったと思う。その頃は石坂洋次郎原作の、青春路線日活映画を、よく観に行っていたのに、裕次郎の映画は一本も観た事がなかった。ナイスガイと呼ばれる裕次郎は、格好よすぎて自分の生活圏でないような・・・高知在住の私には、距離がありすぎて興味がなかった。

ファンでもない裕次郎の歌に震えたのは、楽器が奏でる言葉の音と、裕次郎の語りかける歌声に、流れゆく詩の情感が溶けまじり合い、私の感性は束の間、非現実の世界にと吸い込まれていった。

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