抱(いだ)かれて ・・・3・・・

抱(いだ)かれて

秋・・・紅葉が色づき やがて 空(くう)を舞い 大地にかえる
ランドセルを 背負うこともなく 桜咲く春を知らず ひな祭りの次の朝
逝ってしまった私の小さな娘「母親として凛としなさいね・・・しっかりと」
受話器から 届いた母の声 あの母の声・・・あの母の声

色・・・白で林檎が好き だった 病のなか 舅(しゅうと)を気遣い
待ち望んだ はじめての孫 精一杯に生き抜いた 嫁として母として
優しさに溢れた女(ひと)だった「もうあなたの歳を三つも超えてしまった・・・私」
限りある 生命の愛おしさ その愛おしさ・・・その愛おしさ

窓・・・開ければ黄色の 稲穂 夕陽を受け 眩しく光る
抱きしめたい 生命(いのち)の流れ そして今競い合って 入れてくれる日本茶
娘たち三人三様の味がする「ねえお母さん お茶熱すぎたかな・・・美味しい?」
日々の暮らし 束の間のひと時 このひと時・・・このひと時
「ありがとう・・・」         
          2007年

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