泣いている ・・・7・・・

泣いている

泣いている

地下鉄(メトロ) 降りた帰り道
細いヒールが折れて
抱き寄せるあなたが なぜか幼い
もっと 恋を戯れていたいのに・・・
また ひとりぼっちになっちゃった
ああ 赤い靴履いて 踊りつづけたい
いまも 夢みる わたし

寄せる 波と潮騒は
彩づくおんなのよう
腕まくらあなたは なぜに優しい
もっと 恋を戯れていたいのに・・・
また ひとりぼっちになっちゃった
ああ パンプス鳴らして 明日さようなら
いつも 振るのは わたし

ああ 赤い靴履くから 連れて行ってよ
異人さんの住んでる 異国の街
異国の街

 作曲 三井淳平  編曲 隼トシヒデ 2010年

団塊末子のつぶやき

野口雨情とアンデルセン

赤い靴と「わ・た・し」

「わたし、赤い靴、大好き!」赤い靴・・・?子供の頃に出逢った二冊の絵本。二冊の絵本?・・・そう!赤い靴はいた、2人の女の子のお話。大きくなるまで心にずっと秘めてきたお話。

「赤い靴は~いてた♪女の子、異人さんにつれられて行っちゃった・・・」横浜の波止場から船に乗せられて、異人さんのお国に行っちゃったんだ・・・不思議な哀しさが、沁みてきた歌でした。

「そして、もう一つの赤い靴・・・」勝手に踊り続けて止まらない、赤い靴のお話。足を切られるまで、躍り続けるしかなかった異国の女の子。生き物みたいに空中を飛び跳ねる赤い靴が、目の前に迫ってきて「どうしてなの?どうしてなの?」と、訳も分からず怖かった。そんな哀しみも怖さも、絵本の中のお話。

「私には、優しいお母さまがいるんだもの。船に乗せられて、連れて行かれたりなんかしない。私は悪い子じゃないの、ちゃんとお約束守っているだもの」って、ひとり呟いていた。

でも、でも赤い靴、いつかきっと履いてみようと、思っていた子供だった頃の・・・「わ・た・し」

ハイヒールをはく女

時代が良かったのか・・・人並み?いいえ人並み以上かな、恵まれた家庭で何の苦もなく、大学を出て希望した職業に、今燃えている私。社内の5歳年上の彼と半同棲中です。 会社帰り待ち合わせて、アパートのドアの鍵を開ける瞬間、満たされてゆく自分を感じるのです。

週の半分位かな?あと半分はまだ自分だけの私でいたいと思っている。うぅん、彼との生活よりも仕事を優先したいから職場では知らん顔、これが二人の約束事(ルール)です。仕事と私生活は、背中合わせだと思う。そして、結婚生活は今の私には、まだ重い居場所の感じがしている。

友達からも憧れていた私の家庭、その母の様な良妻賢母でありたい。いや、なりたくない!そんな自分の心の在り方を、もっと見つめていたい・・・だから半同棲中なのです。でも、私は彼の部屋には行かない。このこだわり、どうして湧きあがるのでしょうか?・・・。

愛は緩やかで、大らかな包容力を必要とし、犠牲的な献身も厭わない。けれど、恋愛は自分と相手を互いに活かし、高めあう関係。張りつめた心意気で、馴れ合いにはなりたくない。かなりの利己主義(エゴ)ですが、暫くは独立した他人同士が、束の間を戯れていたいと思っています。

それなのに、近頃の彼、落ち着きたい~って感じが、プンプン匂ってくる。瞬時、愛しさと醒めていく気持ちが行き駆いながら、よりもっと仕事への意欲が頭を駆け巡り、アンデルセンの、赤い靴履いた女の子みたいに「足切られちゃうぞ~」「ごめんなさい~」って、底知れない不安が渦をまく。

明日が来れば又、お気に入りのハイヒールで、靴音響かせて出社です。まだまだ私の夢は未完成。ここまでやってきたのだから、もう少し、頑張ってみたいの・・・「わ・た・し」

パンプス鳴らしてさようなら

はるか年下のあなた、きらきらと弾けて輝いていた二人の感性が、やがて姉の優しさを、そして母の安らぎを求めてくるようになって、あなたは20歳(はたち)を過ぎた幼児(おさなご)のようだった。そのあなたの気持ちのひとつをも、溢さないように包み込んできた私・・・だったはずなのに、気がつくと心を無垢にして、すっぽり甘えきった女になってしまっていた。

職場では中堅管理職候補・・・「結婚とか家庭」とかの話題には頷き笑いながら、むしろしっかりした願望をもっていた私です。世間で言われるような、尖った女性ではないと思ってきた、自分でしたが、上司や既婚者が見つめている先が、色褪せていてだんだんに、隔たりを感じていた頃、世間って何だろう?・・・と、反発の気持ちが湧き上がるたび、尖っていきそうな自分に、悶々とした冷や汗を感じていました。

「あぁ・・・そうなんですねっ!」「なるほど!」新入社員のあなたは輝いていた。まっすぐに突き進んでくる瞳のなかで、一生懸命に私も羽ばたき・・・尊敬される眼差しに、新鮮な呼吸を吐いた。歩調は違うが、目指す方向に純粋さと、遣り甲斐を感じていた。あなたの前に立つと、かわいい女がどうしただの・・・結婚だの、家庭だのと言う空気感とは、別世界の自分でいられた。

・・・私の不思議な心の芽生えでした。ありのままで過ごせる居場所が、ずっと年下のあなたとの日々になり、あなたの理想でありたい・・・そんな思いはいつの間にか消えて、自然体に生きていく年下のあなたに、守られているような、どこか自分勝手な安心感に包まれた心地良さでした。

でもねっ・・・今年の春には、近い日の別れを確信したの。あなたの横顔から大きな幼児(おさなご)の、無邪気さ戸惑いは消えて、逞しさだけが増してきたから・・・近頃は、時折のあなたの心使いに、あなたの困惑する苦悩を感じてしまう・・・私が、本能だけの女になったからでしょうね。

歯痒いけれど、夜明け前に「さようなら」するわ。冬の凍えそうな寒さがこないうちに・・・私は、あなたの部屋から出て行きます。

思いきりパンプスの靴音、鳴らして・・・「わ・た・し」

赤い靴履いて…

「また、ひとりぼっちになっ・ちゃ・った・・・」黄昏の埠頭に寄せる波と潮騒は、零れ落ちた少し苦めの私の涙。遠く仄かに、ぼやけたネオンに優しく抱きしめられて・・・あぁ、赤い靴履いて、横浜の波止場からお船に乗って、異人さんのお国に旅立ちましょうか・・・赤い靴履いた、青い瞳の女の子に逢えるかもしれない。

今もまだ、ふたつの赤い靴が、空中を躍り続けている。そして、私の心の奥深くでも・・・。

光・輝くユートピアを追い求めて・・・きっといつの日にか、掴んでみるぞ・・・赤い靴と「わ・た・し」

夕映えママのつぶやき

・・・あの頃

団塊世代末っこの私や周りは、成長期から青春時代を暗黙の中に、純潔、貞操、傷物、お見合い、同棲、興信所、仲人、適齢期、高齢出産(まる高)、お茶くみ、腰かけ就職、お家柄等の観念に、縛られて過ごしてきました。

小学生の頃、母が時々買ってくる『婦人生活』や『主婦の友』の分厚い月間雑誌に、覗いてはいけない思いを抱きました。

中学・高校生では、旺文社や学研の学習月刊誌を、毎月届けてもらいながら『明星』や『平凡』の月刊雑誌は、貸本屋さんで借りてきて、もそもそと自分の部屋で読んだり、ラジオを聴いたり、気ままに過ごしていました。

一階の応接間にテレビがありましたので、時折、母とテレビドラマを見ていてのラブシーンは、恥ずかしかった。ラブシーンの気配前には、それとなく台所等に逃げていました。大人になった私が、カラオケから逃げるのと同じ感覚でした。

テレビから、歌謡曲を知ったのは、御三家と呼ばれていた橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の活躍する頃からでした。

三田明は、当時の雑誌『美しい十代』と同じネーミングの歌でヒットしてきましたので「いいなぁ」と、思いました。もう一冊『女学生の友』も愛読していて、この本の連載小説『潮風を待つ少女』の、主人公名前募集で、デビューしたのが安達明でした。

そんな学園歌謡、青春歌謡の真っただ中、三船和子の『他人船』が流れてきた時には、ビックリしました。

唄い出しから情念の言葉です。1番から3番の「黒髪の先まで」「指切りの指まで」「目の下のホクロさえ」と、練られた声が時代錯誤の言葉ように、クラクラと纏いついてきました。えっ、恨みや辛さの念を、歌で声で、唄いあげていくなんて・・・まるでテレビで、ラブシーンを見ているような、恥ずかしかった。そんな思いで、演歌を聞いたのは中学生でした。

それからは、だんだんとテレビで歌を見るようになり『ゆうべの秘密』『小指の思い出』『恋のしずく』『夢は夜ひらく』等は、歌詞を想い巡らせていくと、体験すらしない情景に辿り着くのですが・・・あぁこういう歌を、こんな曲調(しらべ)で、こんな歌手がこのように歌うから、売れるのだと思ったりしました。

『ベッドで煙草を吸わないで』『今日でお別れ』は大好きでした。大人の雰囲気が充満していて、女性の内面の表現に(当時の私には、深い意味は解らなかったのですが)品性を感じました。楽曲のイメージが好きなのでしょう。

その一方で『世界は二人のために』の大ヒットには、洋服を前・後ろ、間違えて着ているような違和感を覚えました。

その後の『いいじゃないの幸せならば』のヒットですが、ウ~ゥンと首を傾げてしまいました。ここまで言ってもいいのかしら・・・私の内面に芽生えてきていた女性の独立や、自立感とは、どこかしら、なにかしら、感触が違っているような・・・20歳(はたち)を迎えようとする19歳の、あの頃です。

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